発表概要

 私は、第4回研究大会のライトニングトークにて、「インドネシア・中部ジャワのカトリック教会について:宗教間関係を視野に入れて」というテーマで、自身の修士論文の研究関心やフィールドの概況、研究計画について発表しました。私はこの研究を通じて、現代におけるカトリックへの改宗の過程を人類学的に検討し、インドネシア・ジャワの社会において「カトリックである」ということの意味を、さらには「宗教を信じる」ということの意味を考察したいと考えています。

参加を決めたきっかけ

 ライトニングトークは、大学院の先輩から、短い発表時間で若手研究者が発表できる場があると紹介を受けたことで知りました。そこから発表に挑戦してみようと思った背景には、2つの理由がありました。1つは、2022年の夏に初めて経験した、インドネシア渡航とそこでのフィールドワークの成果を何らかの形でまとめ、それらについて先生方からアドバイスをいただくことで研究の方向性を固めたいと考えていたことです。もう1つは、日々の講義や課題に追われながら2年間で修士論文を仕上げなくてはならないという時間的制約がある中で、自分自身の研究を進めるためには意識的に行動する必要があると考え、その短期的な目標としてライトニングトークが最適であったことです。特に、夏期の渡航の成果を踏まえた発表をする上で十分な準備期間があること、また研究計画であっても発表することができる点で、修士1年の私には最適でした。

発表にいたるまで

 こうして参加を決断しましたが、思い返すと、当初は修士論文の研究の方向性が堅固に定まっていたとは言えない状態でした。そんなとき、アドバイジングを引き受けてくださった先生からのご助言は、自分の研究の方向性を定めていくうえでとても重要なものであったと思います。先生には、一度オンライン面談で、その後はメールでのやり取りで研究報告の添削をしていただきました。初めに提出した研究報告に対しては、研究対象が広範で、実証することが難しいというご指摘を受けました。そしてそれを改善するために、もう一度先行研究とフィールドノートを照らし合わせ、研究対象を絞ること、というアドバイスをいただきました。そこから、今一度フィールドでの体験に思いを巡らせ、それまでのナショナリズムとカトリック教会の結びつきを考える、という研究対象が曖昧な問いから、そもそもなぜ調査地の人々はカトリックに改宗したのか、というより根源的で具体的な問いに辿りつくことになりました。アドバイジング制度は、所属大学の先生方とは違った専門を持つ先生から、研究の視野が広がる貴重なアドバイスを頂くことができ、とても効果的で活用してよかったと感じています。

発表してみて

 当日の発表は、初めて学会発表であったこと、また名だたる先生方がいらっしゃったことで緊張していましたが、皆さま温かく発表を見守ってくださり、発表後には多くの質問を投げかけてくださいました。質問の1つ1つが、自分になかった視点や今後の課題を見つけるきっかけとなったように思います。中でも印象的だったのは、華人といった民族的な視点からの質問や指摘と、先生方が現地で見聞きされる中で抱いたインドネシアのカトリックのイメージの共有、複雑な宗教的アイデンティティの諸相を描いた映画の紹介をしていただいたことです。それらはどれも自分が目を向けてこなかった対象であり、インドネシアという国を分析する多様な視座の存在に気づきました。また、先生方のそういったお話は、より深く多面的にインドネシア社会を理解したいというモチベーションをかきたてるものでもありました。

さいごに

 この体験記を読んでいる方の中には、ライトニングトークに応募するか悩んでいる方もいらっしゃると思いますが、ぜひ参加をお勧めしたいです。発表の準備では、改めて自分の研究を見つめなおすことができますし、その際にアドバイジングという制度は心強いものでした。また、発表をすることで、多様な専門の先生方から有意義なフィードバックをいただくことができ、その後の研究の原動力となる経験を得ることができます。ぜひ気負いせずご応募していただけたらと思います。

 最後になりましたが、運営の先生方、アドバイジングを引き受けてくださり親身にアドバイスしてくださった北村先生、そのほか様々な助言や励ましをくださった方々に、心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。