参加を決めるまで

 私は昨年の第3回研究大会のライトニングトーク(旧:弾丸プレゼン)にも参加をさせていただきました。そのさいには、本番前のアドバイジングや、発表後の質疑応答、懇親会などの時間でご助言を賜り、新たな視点を研究に取り入れて新鮮な気持ちで再度調査に臨むことができました。

 指導教員にも常日頃から指摘されていることですが、私はインタビューなどをするたびに、調査地の方々の話に意識が集中しすぎてしまうことがあります。調査地から物理的に離れたときでさえ、直近に「調査地で起きたこと」ばかり脳裏で繰り返し思い出し、極端に視野が狭くなってしまうのです。

 前回のライトニングトークでの経験や、日ごろから指摘されている視野の狭さを踏まえ、私は現地に身を置きながらも、「調査地で起きたこと」を、より客観的な視点で分析し自分の研究を見つめ直すために、今年度もライトニングトークへの参加を希望しました。そして今回は、2022年8月から現地で調査を開始していたので、私はインドネシアからリモートで研究大会に参加しました。

発表に向けて

 私は、インドネシアの性的マイノリティである、ワリアの生活史に関する研究をおこなっています。ただ、身近にワリアの友人などがいない限りは、彼女たちの生活を想像するのは日本人にとって難しいことかもしれません。性的マイノリティに関する活動が世界的に拡大するなか、私が調査するワリアたちもまた、独自の文化や歴史を持つ人びとです。写真などを用いて、彼女たちの生きざまや生活のありようを伝えることが、研究への理解をうながす上でとても重要であると感じています。したがって、修士2年目に入り、現地での調査も開始したことから、今回の発表では実際に現地で撮影した写真をできる限り盛り込みました。

 さて、ライトニングトークでは、5分間という限られた時間内に研究の背景や、進捗状況、今後の展望などを盛り込む必要があります。前回は用語の説明などを省きすぎてしまったという反省があったので、今回はほかのトピックとの兼ね合いを見て、用語や研究の背景についての説明にも時間をかけるようにしました。ライトニングトークは、学外の方々にむけて、自分の研究内容について端的に伝え意見を求めることのできる貴重な場の一つです。練習期間やアドバイジングの時間なども通じて、自分の研究を、改めてより広い視野で振り返る良い機会になりました。

本番を経て

 前述のように、今回の発表では、現地で撮影をした写真を多用しました。前回の発表よりも調査地の雰囲気をより効果的に伝えられたかと思います。

 質疑応答では、緊張で言葉に詰まってしまう場面があり、終わってからとても反省しました。ライトニングトーク終了後の懇親会でも意見交換をしたかったのですが、今年度の懇親会はオフラインでの開催となり、参加がかなわず残念です。

 スライドへのアドバイスを担当してくださった先生とはメールだけでなく電話でもご指導を賜り、大変お世話になりました。大多数が対面参加のなか、オンライン参加者への対応もしてくださった運営委員の皆さまに感謝申し上げたいと思います。

 現地で起きることにばかり意識が向いてしまい、広い視点が乏しくなっていた最中、研究大会に参加をすることができ救われた気持ちでいます。自分が見てきたものや感じた事柄を、写真などを用いて皆さんに伝えていく作業にも注力するべきであります。そのうえ修士論文執筆にあたっては、説明をするだけでなく、ほかの事象などとの比較や、歴史的な視点など、さまざまな視点で「論じていく」姿勢が必要になります。今回のライトニングトークでは自分の研究を一歩引いて俯瞰的に見て、「論じる」ための準備を進める良い機会となりました。