弾丸プレゼンというのはテック系の学会などで行うもので、自分には全く縁のないものだ、というのが、実際に参加するまでの感想でした。この度、体験談を書くという貴重な機会を頂いたので、申し込みから発表に至るまでの過程、参加までの準備と運営委員とのコミュニケーション、私が感じた反省点を共有させていただきます。最後に、今後の弾丸プレゼンの方向性について、1つの提案をさせていただきます。
参加の動機
応募のきっかけは、フィールドワークが終わった直後に、自身の調査を簡潔に総括する機会を探していたところ、ちょうど指導教員より弾丸プレゼンについて情報提供いただいたことにあります。私は2019年の6月まで、ジャカルタ特別州を中心に、インドネシアにおける医療経済制度について文化人類学の立場からフィールドワークを行ってきました。帰国した年は、あまり自分自身でもフィールドデータを整理できておらず、自身のフィールドデータをどのようにまとめるべきか考えあぐねていました。ちょうどその時、5分という短い時間で行われる弾丸プレゼンの存在を知り、ぜひデータの整理のために参加をしたいと思い、応募しました。
参加までの準備
弾丸プレゼンは5分という短い発表時間だからこそ、周到な準備が必要となります。幸い、運営委員の先生方に余裕を持った締め切りを設定していただいたおかげで、時間にせかされずに準備ができたと感じています。2020年3月に予定されていた第2回大会の準備では、開催の約3か月前に設定されていた発表要旨の締め切りに合わせて、500文字の要旨を作成しました。2020年11月の[再編]第2回大会についても同様、開催3か月前の2020年9月に発表要旨の第1稿、開催1か月前の10月には発表スライド資料の草稿の提出期限が設定されていました。このように、毎回の締め切りが余裕をもって設定されていたおかげで、安心して発表準備に取り組むことができました。
加えて、提出した要旨やスライド資料に対して丁寧かつ率直なフィードバックを頂けたことも、貴重な経験であったと感じています。たとえば、第2回大会に向けて作成した500文字の要旨では、私が情報を端折りすぎたため、実施した調査の位置づけや方法論が不明瞭になっていました。これに対して、運営委員から「実施したフィールドワークの概要などを盛り込むべき」と抜けている点を指摘していただきました。また、[再編]第2回大会に向けて作成したスライド資料については、「発表の構成上、取り組む問いが聴衆に伝わりづらい」といったご指摘をいただきました。
このように、当初参加申し込みをした2019年末の時点では、要旨も構成もあまり明快ではなかったのですが、運営委員とのやり取りの中で、大会当日までにはわずかながらですが改善できたと感じています。
弾丸プレゼンの今後
弾丸プレゼンの魅力は、自由な形で5分間聴衆の前で話すことができる点にあります。私は今回、自身の記述的研究の概要を紹介するために、弾丸プレゼンの場をお借りしました。反省点としては、より明確な「問い-答え」の構造をもつ実証科学的な発表にすべきであったかもしれないとも考えています。いずれにせよ、分科会での口頭発表のフォーマットにそぐわない萌芽的な発表であっても、発表の機会が与えられることが弾丸プレゼンの意義です。とりわけ、KAPALという学際的な場だからこそ、こうした研究紹介は真価を発揮すると考えています。
では、弾丸プレゼンには今後どのような発展の可能性があるのでしょうか。思いつきですが、あるテーマについて複数の参加者がそれぞれの見方を提示するというような「弾丸プレゼン団体戦(仮)」のような企画があれば、発表者間、Kapalメンバー間の交流促進に資すると考えています。たとえば、「ムラ」というテーマについて参加者を募集し、サバンからメラウケにいたるまで、都市部のカンプンから農村部のデサにいたるまで、様々な「ムラ」について視座を紹介するような企画です。またこうした団体戦は、進行中の共同研究プロジェクトのメンバーや趣旨を紹介する場として活用することも考えられます。プロジェクトの広報の場となるだけでなく、コメントを得るよい機会にもなると思います。
最後になりますが、弾丸プレゼンという新たな取り組みを企画・実施し、参加者に対して厚いサポートをしていただいた運営委員の皆様に心よりお礼を申し上げます。
阿由葉大生(東京大学大学院総合文化研究科・院生)
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