ひょんなことから実現した弾丸プレゼン参加

 私は2018年10月に、大学の先生の紹介によりKAPALのメーリングリストに参加した。当時は博士論文の執筆作業で忙しく、第1回研究大会には参加することができなかった。しかし、インドネシアに関わる研究をしていらっしゃる先生方や研究者の方にずっと前から会いたかった私は、第2回研究大会への参加を決め、大会当日を楽しみにしていた。その時は、私は妊娠25週目だった。ところが、台風のため2019年10月に開催予定だった第2回研究大会が2020年3月に延期になった。その時期の私は産後3か月目で大会への参加が無理だなと悔しく思いながら受け止めた。しかしコロナ禍で対面の大会が11月に延期され、さらにオンライン大会に変更されるとの情報を受け、私は迷うことなく参加の申し込みをした。申し込み当初は、初めての参加で発表する自信がなく、さらに産後の半年間でしばらく研究に触れる機会も全くなかったため、参加者としてしか申し込んでいなかった。しかし、KAPALのメーリングリストで弾丸プレゼン追加募集のお知らせを見た瞬間、心の中で研究に久しぶりに戻りたい気分が高まった私は、「せっかくの機会なので、参加者としてだけでなく発表者になってみようか。発表時間が5分なら準備もできるのではないか?」と思った。そこで、弾丸プレゼンに応募した。

 このように張り切って応募した私は、最終的には発表の準備をバタバタとしていった。最初は、発表時間が5分間しかないから今までの研究発表よりパワーポイント資料が少なくて早く作成できると予想したが、思った以上に難しかった。特に、数字だけでなく詳細説明が欠かせない社会科学の研究発表では、内容をコンパクトに短縮するのが大変困難であり、5分間は全く足りなかった。また、日本語が母国語ではない私にとっては早口の日本語で口頭報告するのが別途課題であった。もちろん1回の練習では絶対にできないと覚悟し、発表の内容に慣れるまで、遅くとも1週間前から毎日練習しようと予定していた。しかし乳児を子育て中の私は、結果的には前日の一日しかリハーサルができなかった。

弾丸プレゼンをとおして学んだこと

 しかし、それらのプロセスが今後の研究生活にとって非常に貴重な経験となった。具体的には、弾丸プレゼンの発表準備から本番に至るまでの間に、私自身にとって大事なことを3つ学ばせてもらった。第一に、発表資料の準備を通じ、私の研究の中で重要なポイントは何かを改めて自分なりに整理できた。5分間は短い時間であるからこそ、その時間を有効に使って自分の研究の最も主張したいポイントを直ちに伝えることが、研究者にとって重要なスキルではないかと感じた。第二に、カパル研究大会の参加者は様々な分野から来ており、私の研究に関しては全く知識のない方もいるため、一般の方に対して研究内容をどのように簡単に説明すれば良いかが勉強できた。第三に、母親になった私にとっては、本大会の発表準備作業と本番への参加が今後の研究生活への復帰に向けた練習となった。調査の実施、資料の作成、報告の練習、研究大会への参加等は、研究者の日々のサイクルであり、私自身もこれから行うことであるが、育児と研究を両立するにはどのような対策をするべきかを本大会への参加を通じて実際に試すことができた。

 そうして苦労した発表の準備や本番の緊張感は、最後にオンライン懇親会で解放できた。これまでの様々な研究大会では質疑応答によく緊張したが、本大会では懇親会の和やかな雰囲気のなかで参加者からの質問に気軽に回答できたので、私は安心した気分になることができた。また、参加者の皆様から多くの温かいお言葉も頂き、大変嬉しく思った。そうした爽やかなオンライン懇親会に参加し、また多くの方々の意見やインドネシアでの様々な調査経験のお話を楽しく聞けたのは、この日の最高の締め括りだった。

 最後に、この場をお借りして[再編]第2回研究大会の開催にご尽力いただいた運営委員会の先生方に改めて御礼申し上げたい。応募の段階から発表資料の作成や本番前の準備まで、多くの先生方に大変お世話になった。特に、発表資料の作成にあたっては大会プログラム委員の先生方から貴重なコメントを頂いたおかげで、発表内容を適切に改善できた。またコメントでは様々な視点からの感想やアイディアも頂いたため、今後の研究にとって非常に重要なインプットになった。そういった全力で丁寧なサポートは発表資料の準備だけでなく、大会本番に至るまでとても実感していた。オンライン大会であるからこそ、対面の研究大会にはない大変な準備作業があったと想像するが、本大会が成功できたのは大会運営委員の方たちからの情報発信とサポートが効果的であったからだと思う。

リスキナ・ジュウィタ(東京農業大学・特別研究員)